コラム記事:株式会社東レリサーチセンター 国須 正洋
- コラム

2021.02.10

コラム記事:株式会社東レリサーチセンター 国須 正洋

コラム記事:株式会社東レリサーチセンター 国須 正洋

氏名 : 国須 正洋

所属 : 株式会社東レリサーチセンター 表面科学研究部 第2研究室

 

 弊社は、材料や素材の受託分析を主な業務としており、研究開発や生産工程における課題に対して、素材の化学分析や物性解析による技術支援を行っております。AICEには2017年から、現在の共同研究の前進であるテーマ毎の共同研究(排ガス後処理触媒および後処理システム、デポジット、エンジンオイルなどに関係する研究グループ)に参加しております。

 

 AICEは、各社が持つ基礎・応用領域の課題を研究テーマとし、大学や研究機関を中心に研究を進めその成果を共有するという、いわゆる「産学連携」での共同研究が行われています。AICEには、組合員として自動車メーカが、共同研究企業として自動車部品や輸送機関などの関連メーカが多く参加しておりますが、弊社は、自動車や自動車部品を作っているわけではありません。そのため、弊社のような会社がAICEに関わるのは不思議に思われるかもしれません。ですが、実際には、AICEの研究促進に関わる物理分析や化学分析の技術について、弊社が持っている技術情報を提供する、もしくは、大学で行われた先進の分析成果情報を共有させて頂くという、弊社側とAICE側が相互にプラスになるような形を目指し活動させて頂いております。

 

 AICEの研究は、自動車の動力に関係する様々な課題を研究対象としております。その課題の解決のため、それぞれのご専門の道に精通されている大学の先生方や組合員、共同研究企業の皆様が、自動車という複雑系を研究対象とするにあたり、機械系、化学系という枠組みを超えて様々な視点から意見を出しあって研究を進められております。この点は、他に類を見ない素晴らしい特徴であろうと思われます。この活動の中に弊社が参画することは、弊社のような分析を専門とする業種からの視点で各課題や結果を議論する物理現象・化学現象を正しく理解するという観点で重要となるのでは、と考えております。

 

 ただし、実際のところは、弊社参画当初は専門外のところからスタートとなりましたので、議論に入っていく難しさを感じていました。大学の先生方や組合員の方々に多大なサポートを頂き、何とかついていくことができたと思います。現在の共同研究企業数は非常に多く、また幅広い業種からご参加頂いていると伺っております。本コラムをお読みの方の中には、同じように共同研究企業として参画されている会社、もしくはこれから共同研究企業として参画を検討されている会社の方々もいらっしゃると思われます。各社ごとに参加の目的や事情、得意分野は異なると思われるため、共同研究企業としてこのAICEの活動に継続的に関わっていくためには、各社の事業内容に合わせて、双方向でメリットが得られるような関わり方を各社ごとに模索していくことが必要ではないかと考えております。決して簡単なことではありませんが、その分、享受できるものは、研究成果という目に見えるものに加えて、テーマ設定から成果達成までの研究プロセスの経験や議論など、何物にも代えがたいものがあると思います。

 

 最後に、今後のAICEの研究ですが、やはり現在は世の中の流れとして、自動車の電動化という大きな波が押し寄せています。それに伴いAICE研究のキーワードが「内燃機関」という枠を超えて、「カーボンニュートラル」にシフトし、十年後、数十年後もしくは百年後を見据えた、より新たなものに変わりつつあります。自動車産業の変革期の真っただ中において、これまで想定もされていなかったような成果が達成されるのではと我々は大変期待しております。末筆ではございますが、今後のAICEの益々のご発展をお祈り申し上げます。

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